
11月25日、宮城県南端の丸森町耕野地区で、「ころ柿」作りの援農ボランティアに参加してきました。11月は、「ころ柿」作りの最盛期。里山の風景が広がる耕野地区のあちこちで収穫を待つ柿がたわわに実っていました。
地域によって呼び方が違う干し柿
丸森町耕野地区の干し柿は「ころ柿」と呼ばれたり、「あんぽ柿」と呼ばれたりと、地域や農家さんによって呼び方が違うようです。歴史を辿ると、古くは伊達政宗公の時代に遡るほど、柿とのつながりが深い地域。現在では、柿農家は15件ほどになっているそうですが、以前はほとんどの家で柿を栽培し「ころ柿」を作っていたそうです。
枝をT字にカットするのがポイント
「ころ柿」作りは、例年2月に作業が始まります。柿の木の剪定、肥料やり、畑の除草(3~4回)、消毒(3回)、そして11月に収穫時期を迎えます。収穫した柿は、まず縄に通しやすいように柿の柄と枝をT字に伐っていきます。
ボランティアでは、今回この作業をお手伝いさせて頂きました。その後皮を剥き、ポリエチレン製の縄に等間隔に通していきます。この縄を1連と呼び、1連に通す柿は20個ほど、その総重量は4、5キロにもなります。その後、硫黄燻蒸(柿が黒く変色するのを抑える)という工程を経て、「柿ばせ」と呼ばれる小屋に干していきます。
「ころ柿」が快適に過ごせる小屋「柿ばせ」
「柿ばせ」は、壁や戸のない、柱と屋根のみの二階建ての小屋で、ころ柿を干す専用の小屋です。柿を干すのは風通しの良い二階部分で、5キロ余りの連になった柿を二階まで上げ、さらにそれを高いところから下げていきます。
その作業はかなりの重労働で、お世話になった農家さんでは、毎年この時期実家を離れている家族も、仕事終わりに戻ってきて夜な夜な総出でこの作業を行うということでした。干した柿は、一ヶ月あまり乾燥させた後、出荷の時期を迎えるそうです。今回お世話になった農家さんでは、12月20日過ぎには出荷を始めるそうです。
まさにアートのような美しさ
今まで、完成した干し柿を見たことはありましたが、干したばかりの柿を見るのは、今回が初めてでした。また、干し柿は暖簾のように縦一列に干されているものだと思っていましたが、今回のようにアーチ状に干すこともあるというのを知りました。農家さんによると、より乾燥しやすいように、柿と柿がくっつくことがないように工夫されているということでしたが、景観的にもとても美しく、アートのようでもありました。
干した後、柿の連と連の間に立ってみたのですが、ほどよい湿度を感じるみずみずしさと、穏やかなやさしい香り、柿の色の鮮やかさ、何とも言えない心地よい空間で、いつまでもいたくなるような場所でした。五感で体感してほしいそんな体験です。
その土地ならではの風習、文化を楽しむ
耕野地区では、それぞれの農家さんがそれぞれの干し方で、柿を「柿ばせ」に干しています。あちらこちらの「柿ばせ」をめぐってみるのも楽しいかもしれません。柿を干す小屋を「柿ばせ」と呼ぶのは宮城や福島だけのようです。干し柿の呼び方も、柿を干す小屋の呼び方も地域によって違うって面白いですね。
そんなこの土地ならではのことを調べに行く楽しみ方もありそうです。「ころ柿」は、1月中旬ごろから耕野地区の直売所などで販売されるそうです。
今から「ころ柿」を食べることができる日が、待ち遠しいです。
ライター
原 晶子(はらあきこ) 埼玉県出身、仙台市在住
関連情報
丸森町観光案内所
http://marumori.jp/