2014年9月、宮城県角田市にオープンしたパン屋「hori pan (ほーりーぱん)」。店名はオーナー兼パン職人の堀畑さんの名前にちなんでつけられている。もともとは柴田町槻木にある「そば日和」さんの一角でパンの販売をしていた。徐々に人気がでて、スペースが手狭になってきた時、縁あって今の店舗となる古民家を知人に紹介してもらい移り住んだ。少しずつセルフビルドで改修しオープンさせた。開店して3年、今ではInstagramやTwitterなどSNSの口コミで広がり、すっかり人気店になったほーりーぱん。地元の素材や季節の食材を活かしたパンが、常時20種類くらい販売されている。

「美味しいね」の一言が嬉しい

堀畑さんが料理人になろうと思ったきっかけは、小学生時代にさかのぼる。実家は岩手県久慈市で小さな広告代理店を自営していた。店舗兼自宅には、多くのお客さんが毎日訪れた。堀畑さんは時々手伝いで、お客さんにコーヒーを給仕することがあったそうだ。「インスタントコーヒーを淹れていただけなんですけど、お客さんがいつも美味しいね!って言ってくれるんです。子供ながらにそれがとても嬉しくて。いつか自分で料理をつくって、出す人になりたいなあと思うようになったんだと思います」。

忘れられない味のコッペパンとフレンチトースト

パン屋になろうと思ったきっかけは、「近所の美味しいコッペパン屋さんと父が作ってくれたフレンチトーストかもしれない」と語る堀畑さん。「クレイマークレイマーという映画のワンシーンで、父親が息子にフレンチトーストをつくって、それを息子に食べさせるシーンがあるんです。父はその映画が好きで、同じようにフレンチトーストを作ってくれてたんです」。

ナイフで切って食べるパン料理

「僕はそのフレンチトーストが大好きで。味も好きなんですが、フレンチトーストって、お皿に載せて、ナイフとフォークで食べますよね。それがとても印象的で」とパン屋になりたいと思うようになったきっかけを話してくれた。「僕はただパンを売るパン屋ではなく、パン料理屋を目指しているんです。パンが脇役ではなく、パンが主役のお店。パンにあう料理を出すようなお店をつくりたいんです」。そんな堀畑さんのお店の一番のお薦めはカンパーニュだそうだ。「アンパンやクリームパンが地元の人には一番人気なんですが、小麦の本来の味を楽しめるカンパーニュが美味しいお店にしたい」と語る堀畑さん。

学生時代は長距離ランナー

忙しい合間にもお客さんのよろこぶ顔が見たい一心で、朝早くから、夜遅くまで生地をこね、パンを焼く堀畑さん。実はもとはバリバリのアスリート。中学生の時には、陸上競技の長距離ランナーとして岩手県の大会で優勝したり、大学時代は、山岳競技で全国優勝したこともあるそうだ。「僕は本当は文科系のクラブに入りたかったんです。実際小学生の時は料理クラブと家庭科クラブに入っていました(笑)。でも中学には運動部しかなくて」。

女子力高い体育会系

そんな体育会系出身の堀畑さんだが、合宿には料理の本やおしゃれなカフェが載っている雑誌を持ち込んで、休憩時間にはそれを読んで過ごしていたという。大学時代に仙台で一人暮らしをしていた時には、後輩部員を家に招いては、パスタや手づくりパンで後輩部員をもてなした。少々、イカツイ目の外見とは異なり、かなり女子力が高い。

初めての渡仏

その陸上がきっかけで、フランスのレンヌに行く機会に恵まれた堀畑さん。レンヌで開催される陸上競技大会に出場する仙台市の代表として選ばれた。競技へ出場することが目的だったので、いろんなところを食べ歩くというわけにはいかなかったそうだが、小さいころから料理人になりたかった堀畑さんにとって、初めての渡仏は、とても刺激的だったそうだ。いつかもう一度行きたいという思いを募らせ、初めての渡仏から10年後再びフランスへ渡る。「3年前に角田に引っ越しして間もないころ、店を本格オープンさせる前に、仙台で知り合ったフランス在住の知人を頼って再び渡仏しました」。

パン文化の中のパンづくりを知る

10日間の滞在期間中、最初の3日間をパリで過ごした。滞在先のホテルから歩いていける範囲のパン屋さんを片っ端から訪れた。その後、知人に紹介してもらったノルマンディのオーベルジュペイザンヌで過ごした。そこで「フランスの家庭、パン文化のなかで、パンがどのようにふるまわれ、食されているのかを自分の目で確かめることができた」と語る堀畑さん。「僕はパン文化の国ではどうやってパンを食べているのかを知りたかったんです。日本では。固くなったお米をお茶漬けにしたり、チャーハンにしたりしますよね。パン文化の人はどうやって固くなったパンを食べているのか。そんなことを角田で店を本格オープンさせる前に見てみたいと思ったんです」と振り返る。

米文化の町にパン文化を!

堀畑さんのお店は、パンだけでなく、料理にも、コーヒー豆にもこだわっている。店内の内装や家具も自分であれやこれやと雑誌をみたり、イメージを膨らませて自作した。そやれなカフェっぽくなっているのだけれど、堀畑さんはカフェとは呼ばれたくないそうだ。やっぱりメインはパン。しかもただのパン屋ではなく目指すのはパン料理屋だ。そして堀畑さんが目指しているのはパン文化を角田に根付かせること。「宮城県の主食というか、日本人の主食はやっぱりお米。でも僕はこの米文化の町にパン文化を根付かせたいんです」と熱く語る。

地元の素材を活かしたパンづくり

堀畑さんのこだわりは、とことん地元の素材にこだわるということ。地元に愛されてこそのお店。地元の人とのコミュニケ―ションも欠かさない。実際に、取材当日も客間では、地元の人たちが小宴会を開いていた。「なんでも、困ったことがあったら相談しいーや」とまるで息子に語りかけるかのように、区長さんが笑顔で話しかけていたのがとても印象的だった。地元の食材を生かし、地元の人の協力を得ながら、いっしょにつくりあげてきたパン屋なのだということがよくわかる。

平日がおすすめ!週末は15時くらいがいいかも

人気店となった今でも、開業当時と変わらぬ熱い思いで、地元の食材を生かしたパンづくりにはげむ堀畑さん。お客さんとの距離感が大切と、パンを焼いている忙しい合間にも、レジに立ち、お客さんとの会話も大切にしている。「週末はどうしても混雑してゆっくりお話しする時間がありません。できたら平日に来てもらいたいですね」と語る堀畑さん。「パンを焼くタイミングもあるので、15時くらいが意外と品数も豊富でいいかも」とのこと。人気のパン屋さん、平日や、週末の15時くらいを狙って訪れてみてはいかでしょうか?

関連情報

ほーりーぱん/hori pan
https://www.facebook.com/horipan/
・ 住所 角田市島田字涎8-2
・ 営業日 月・火・金・土・日
・ 営業時間 11:00~16:00 
・ 駐車場 あり/7台