高いビルや、新しい建材を使った現代的な家が主流となっている今。

みなさん、古き良き建物の魅力を忘れてはいませんか?

これは、昔ながらの家づくりやその技術を今もなお伝えていこうとする、熱い想いを持った職人のストーリーです。

 

家づくりの原点は、大好きな自然と「ものづくり」

綺麗な空と生い茂る緑に囲まれ、一軒の古民家が佇んでいました。

「見晴らしの良さを活かしたくて、この場所で古民家改修をしようと思ったんです」と語るのは、ここ山元町で建設業を営む守徹さん。

守さんの家づくりのルーツは、生まれ育った自然豊かなこの町にあります。

守さんは大工の家に生まれ、幼い頃から作業場にあるノコギリなどで木のおもちゃを造って遊ぶ、ものづくりが大好きな少年でした。「気づいたら大工の道に進んでいましたね」という守さんは、大人になって建築の仕事を始めてから、自然素材を使った家や、職人の伝統的な技術が使われている古民家に惹かれていきました。

澄んだ空気が漂うこの家の魅力をうかがうと、「古い木の家はいいよね。長い年月を生きてきた木って、新しい木にとっては先輩でしょ。それに、昔の大工が築いてきた技術もすごいよ」。

長い間生き抜いてきた木と、素晴らしい家を建てた先輩大工への敬意。そして、自然の魅力や職人のこだわりといった、今を生きる私たちが忘れていたものの良さを、守さんは思い出させてくれました。

 

家を壊すのはもったいない。だからこそ「100年200年もつ家づくり」

守さんが家づくりで大切にしていることは、次の世代にまで残る家を造ること。「せっかく造られたものが壊されていくのはもったいない」と話す守さんにとって、長くもつ家を造ることが大工としてのポリシーです。

「そのために『呼吸する家』を造ります」と、守さんは語ります。

「木の材質にこだわり、湿気を吸って家を腐敗から守る作りにします。一般的な住宅では、集成材という、板のような木を接着剤で貼り付けた柱を使っていて、強度は充分なのですが、湿気を吸わないので素材自体が『呼吸』をしないんです」。これは、人工物で家を造るとその家はいつか死んでしまうということを意味していました。

「柱にはまっすぐ伸びる杉を、梁には捻れながら伸びる松を使うなど、それぞれの部材に適した木を使用します」。

「長い年月朽ちることなく『生き続ける家』を造るには、職人たちの素材への造詣の深さと技術が必要なんです」。

守さんの一言一言が、ものづくりの奥深さを物語っていました。

 

過去と未来をつなぎ、その技術を守る古民家再生

「古い木の良さや職人の技を、次世代の人たちに伝えていきたい」と語る守さん。

自然や昔ながらの技術を大切に思う気持ちだけでなく、それらを未来に残していくことを大工としての使命と感じているようです。そのための一つとして、現在守さんが取り組んでいるのが古民家再生。昔の家を再生するには、家の構造を知るところから始まり、どこを活かしてどこを新しくすれば「生きる」のかを考えなくてはなりません。

守さんは「若手大工に改修の行程を経験してもらうことで、古民家の技術を後輩たちにも伝えていきたいんです」と意気込んでいました。

生まれ変わった新しい古民家では、カフェや地元で採れた野菜の販売、ものづくり体験などが行われる予定です。守さんは「ホッと一息つける空間で、人が集まれる場所を作っていきたいですね。来た人には古民家の良さを知ってもらえたらうれしいね」と笑顔で話していました。

その表情を見ながら、これから生まれる古くて新しい場所への期待と、そこで起こる人の出会いや交わり、そして、古いものの良さが次の世代へとつながった先の未来を想像し、私たちの胸も高鳴っていきました。

 

<店舗情報>

住所/亘理郡山元町八手庭字石田73-2

電話/0223-37-1217

WEB/http://morikyu-kensetsu.co.jp/

 

<取材担当者>

ライター 藤本真希

写真 田中萌奈

編集 一藤英恵